初めてのインド 【1】

「俺さまはゴキちゃん?」

199×年2月××日
  わたくし、男4×才にして初めての海外旅行。それもインドへの一人旅。当然、関空も初めて。緊張の面 もちで仁王立ちする自分が我ながらおかしい。 なにぶん“初めて”の関空なので、勝手が分からない。どうにか、「出国手続き」なるものまでを済ませて、飛行機の見える場所までたどり着いたが、ここから先が問題である。
  ふと見ると、何やら「近代的な小さな電車」が時々行き来しているのが見える。 「はて?この電車に乗ってもよいものか・・・?」 もし、変な乗り場に行ってしまったら、出国手続きを済ませているだけに、二度とここには戻ってこられないかもしれない。不安がよぎる。念のため、旅行社を経営している友人に電話をする。(以下は完全に大阪弁。お聞き苦しいと存じますが、少々ご辛抱を!)

わたし: 「あぁ〜・・・もしもし・・・オレ。あのなー・・・今な・・・関空に おるねんけどな・・・なんか電車が来るねん。これ乗ってもええんかな??」
友 人: 「なにゆーてんねん?!どこにおるって?」
わたし: 「あぁ〜、カ・ン・ク・ウ」
友 人: 「なにしてんの?」
わたし: 「うん・・・インド行くねん!」
友 人: 「誰と?」
わたし: 「一人で・・・!」
友 人: 「何で??」
わたし: 「なんでも・・・」
友 人: 「なんや?それ!?・・・・・・」 (しばらくこの阿呆な会話が続くので、割愛させていただきます。)

 結果、まったく問題ないことが判明したので、当然のようにすました顔で乗り込み、搭乗ゲートで出発を待つ。それからは、迫り来る一人旅のプレッシャーに耐えきれず、緊張のあまりに腹痛と下痢に襲われ、3度もトイレに駆け込む体たらく。我ながら情けない。普段からお腹が弱いので、心配はしていたが、出発前からとは・・・・。
  出発時間も約一時間遅れ、おかげで出発直前に日本国内における最後(4度目)のトイレに駆け込むこととなってしまった。
  「こんなことでどうする!!脆弱な日本人のお腹にとって、聞きしに勝る苛烈な環境と聞く、あの“インド”へ、わたしはこれから行くのだぞ!!」 魂の声が聞こえてくる。

 なんとか飛行機に乗り込むと、一転して、まったくリラックス。ANAのムンバイ(旧ボンベイ)直行便で快適な空の旅(今はムンバイへのANAの直行便はないらしい)。ただひたすら食べて寝るが、なぜか食事がベジタリアンになっていた。そう言えば、搭乗手続きのときに、なにか訊かれたような気がする。が、よく覚えていない。やたらに喉が渇くので、お腹のことを忘れ、オレンジ・ジュースを何度もおかわりしてがぶ飲みした。
  そんな快適な空の旅も終わりに近づいたムンバイ(ボンベイ)国際空港到着30分前のこと。突然、スッチィーがアナウンスで、
「ただいまから、インド検疫当局のご要請によりまして、・・・・エアゾールを散布いたしますので、ハンカチなどをお口もとにお当てください。・・・・・・・」 と言った。しばらくすると、美しきスッチィーが口にハンカチをあてながら、二人で通 路を後ずさりして、エアゾールを殺虫剤のように散布しはじめた。こんなことはまったく聞いていなかったので、びっくり!!
  憧れのインドに出かけるにあたり、斎戒沐浴して、心身ともにこれを清めてでかけてきた私にすれば、今さら「バイ菌くん」扱いとは、はなはだ不本意、無礼千万。 そんな大そうなことを考えていると、子供の頃のある夏の夜、我が家で起きた大事件がフラッシュバックのようにわたしの脳味噌の中を駆けめぐった。

 あれは暑い夏の夜、我が家に信じられないような大きさの、真っ黒なゴキブリがいきなり飛び出してきて、夕食後の家族の間を走り回った。たちまち、あたり一面 は阿鼻叫喚の地獄絵図。寝転がっていたわたしは、女の子のような黄色い悲鳴をあげつつ、俊敏この上ない動きで飛び上がったが、危うく問題の侵入者を踏みつけてしまいそうになった。(あの時踏んでいたら、今ごろ、完全に「トラウマ」になっていただろう) 殺虫剤を何度かけても、一向に弱る気配を見せず、家具などの物陰に隠れては、ゲリラ戦を展開するこの歴戦のツワモノは、激闘20分の後、ようやく玄関先で、まさに虫の息・・・そこで、3cmほどの至近距離から、殺虫剤のトドメの一撃を与えたところ、「びくっ!!」と動いたかと思うと、わたしの顔面 むけて飛んできた。あのときの「恐怖」が美しきスッチィーとエアゾールから蘇ってしまい、臨終間じかのゴキちゃんのように手足を「ぴっく!」と動かしてしまった。
  しかしながら、なんでインドまできて「殺虫剤」(編者注 おそらく消毒液のエアゾールです)をかけられないといかんのだ!! 俺さまはゴキちゃん?
  この旅は前途多難かな?・・・・・・・つづく!

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匿名希望(オヤジ)



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